2023年12月29日

塔 2022年3月号

青引きて緑を引きて赤を引くまだ覚えざればピンクのマーカー

来年はWeb受験になるさうなカメラの監視は再来年より

眠たきはラジオの授業先生の声麗しき薔薇色の靄

勧められ学ぶ老年看護学老いは現実間近にをりぬ

玄関に玩具のごとき聖樹置くこれにて終はる我が家の聖夜

クリスマスプレゼント隠す苦労など息子は知らず老いてゆくのか
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Posted by ラヴェンダの風 at 17:44Comments(0)塔 短歌

2023年12月29日

塔 2022年2月号

里山の冷気窓より入り来ぬ龍谷大学瀬田キャンパスは

二度(ふたたび)の学生生活コロナ禍に色を変へけりさびしき色に

仏教を学ぶ気なくて「道元」の講義聞きをり修行の如く

曹操と董卓現れ「資治通鑑」佳境に入るや劉備は何処に

むぎゆむぎゆと肩をつかみてほぐしけりなぜか疲るるZOOMの授業
  


Posted by ラヴェンダの風 at 17:34Comments(0)塔 短歌

2023年12月29日

塔 2022年1月号

三度目は遠慮したきが本音なりロキソニンさへ飲めぬわれゆゑ

「この薬もうないのかも」処方箋手渡す看護師不安を伝ふ

勧められ学ぶ老年看護学 吾にも迫る「殿、御覚悟を!」

和伊辞典の箱に伊和辞典おさまりて届く不思議に頭かかへぬ

師より出で仲間の内を巡り来る本様々にアジアを伝ふ

この暮れは帰れるだらうといふ息子心もとなく吾はうなづく
  


Posted by ラヴェンダの風 at 17:26Comments(0)塔 短歌塔 短歌塔 短歌

2022年09月21日

9月21日の記事

2008年8月

一人分朝の珈琲淹れて呉れ検診に行く夫六十歳
初夏の風に揺れゐる紫陽花の未だ咲かざる緑清しき
閉づる眼に五月のみどり立上がるまどろみといふやはらかき園
夕刊の万とふ人の死の報に言葉もなくて胡瓜刻みぬ

2008年9月

抱ふれば痛む箇所を的確に医師探り出す吾が乳房に
ドア開きがらんどうを曝しけりひと時前にゐし検査室
ピアノありし空間にゐてそを弾くであらう小さき指思ひけり
この際とどちらともなく言ひ出しし夫婦別室寝台(ベッド)を選ぶ
引越しに五十路の吾は根を切りて鉢植の如移り来たりぬ
やうやくに越して来たりし終の家紅あぢさゐの咲く庭とせむ

2009年10月

干しものの波掻潜り掻潜りきらきら夏の主婦を謳歌す
定食といふ昼食に憧れて主婦の昼食つましく揃ふ
えいやつと捨つるつもりでゐし雑誌切り抜いてゐる吾が性分
冷房の部屋を出づれば隣室に汗光らせて夫眠りゐる
羽ばたきて行くと知りつつ今はまだ二人居の日を描かずにゐる

2008年12月

鱗雲けふにて終る仕事なり朝の通勤ラッシュに混じる
体大き男の後を付き行きて難なく通る朝の改札
階段に僅かな隙を見つけては歩を進めるを通勤と知る
保育所は厚きカーテン閉ざしたり子等の声無く赤蜻蛉舞ふ
その笑顔を答とぞいふ恋人のやさしき嘘を吾は憎めり
  


Posted by ラヴェンダの風 at 12:07Comments(0)